まずはとても重要なことなので先にお伝えしますね。
ここにある「10年」はあくまでも安全に使える目安、そのためには知っておくべきことがあります。
■設計上の標準使用期間とその使用条件
■扇風機による使用10年前後の重大事故発生の動向
■火事になる原因とならないために注意したいことや対策
■連続使用テストを製品が動かなくなるまで行っているメーカー
今回はサーキュレーターをつけっぱなしする際に、こういった安全に使用するための情報と電気代や就寝時の注意点をまとめています。
各メーカーがこの使用条件内ならこの期間は安全に使用できますよという目安はあるものの、誤ったままの使用は寿命を縮めてしまい間違いのもと。
この記事がご自身はもちろん、ご家族の方にもお役に立つことを願います。
サーキュレーターの設計上の標準使用期間とは?
まずサーキュレーターの設計上の標準使用期間を見ていきましょう。これは長期使用製品安全表示制度で定められたもので、そこにはメーカーの義務によってその製品が安全に使用できる期間や条件、製造年月と経年劣化による発火・けが等の事故に至るおそれがある旨が記載されています。
この設計上の標準使用期間とは長期にわたり使用される製品のうち、経年劣化による重大事故発生率は高くないものの、事故件数が多い製品に注意喚起等の表示が義務化されたもの。
製品の製造又は輸入を行っている事業者が対象となっています。
設計上の標準使用期間の対象電化用品は5品目
■扇風機■換気扇■エアコン■ブラウン管テレビ■洗濯機(全自動洗濯機/2相式洗濯機)
その表示制度の対象電気用品は次の5品目「扇風機・換気扇・エアコン・ブラウン管テレビ・洗濯機(全自動洗濯機/2相式洗濯機)」です。
これら対象電気用品の技術基準を遵守すべき製品の製造又は輸入を行っている事業者は遵守しないと、販売禁止という厳しい措置もあります。製品の故障などの無料修理等を行う無償保証期間とは違いますよ。
この中にはサーキュレーターは含まれていませんが、経済産業省の長期使用製品安全表示制度には、対象の5品目そのものに該当しない製品であっても、技術基準を遵守すべき機能が付属している製品は規制の対象となるともあります。
実はサーキュレーターは対象家電用品外
以前はサーキュレーターは電気用品区部では元々扇風機と同じ分類でしたが、今は違う品目になっています。2014年頃に別々に分類されたようです。
現在はこのようにサーキュレーターは長期使用製品安全表示制度の対象外なんです。
扇風機の標準使用条件を遵守しているメーカーが多い
設計上の標準使用期間の設定において、できる限り統一した考え方で設定されることが望まれることから、それぞれの対象家電用品の標準的な使用条件がJIS規格で制定されています。
これは扇風機のJIS(日本産業規格)ですが、メーカーはこれに準じて製品に同梱する取扱説明書等に記載し、設計上の標準使用期間の算出を行っています。
繰り返しますがサーキュレーターは長期使用製品安全表示制度の対象外、それなのにほとんどメーカーはこれを遵守されています。
これは理由が2つあります。
①電気用品区部での登録が「扇風機」である。
②電気用品区部での登録が「サーキュレーター」であるが、自主的に表示している。
大手メーカー3社に問合せをしたところ、3社とも②であるとの回答を頂きました。また別の1社は「サーキュレーター」として登録しているので、表示はしていないとのことです。
サーキュレーターの具体的な標準使用条件
■1日あたりの使用時間・・・8h/日
■1日あたりの使用回数・・・5回/日
■1年間の使用日数・・・・・110日/年
■スイッチ操作回数・・・・・550回/年
サーキュレーターの具体的な標準使用条件については上記の通り。「JIS C 9921-1」は扇風機の規格です。ほとんどサーキュレーターはこれらの条件下で、設計上の標準使用期間が設定されています。
つまりこれが各メーカーの「安全に使えますよ」と言っている使用期間の算出根拠です。
サーキュレーターの設計上の標準使用期間と実例
■サーキュレーターの設計上の標準使用期間はメーカーや機種によってバラバラ
■サーキュレーターの設計上の標準使用期間の平均はおおよそ5年
このようにメーカーや機種によって「安全に使えますよ」という、設計上の標準使用期間はバラバラです。家電量販店に行くとこれをよく確認するんですがほとんどの機種は4~6年の間です。平均おおよそ5年といったところでしょうか、でも中には写真右下にように10年という物もあります。
ちなみにこれは無印良品のサーキュレーター、3機種確認しましたが全て10年設計でした。無印良品のサーキュレーターは首振り機能はありません。社外秘となる構造上のことなので個人ではなんともい言えませんが、やはり余分な機能がないシンプルな設計が、このような長期設計となっているのではないでしょうか。
ここで再度申し上げますが、設計上の標準使用期間は製品の故障などの無料修理等を行う無償保証期間とは違うので、誤解がないように注意してくださいね。
扇風機の使用10年間前後の重大事故発生の動向
■経年劣化したサーキュレーターは発火やけが等の事故に至るおそれがある
■他の表示制度の対象電化用品も含めほぼ10年以上経過後に重大事故が発生している
これは経済産業省が発表した「2021年の経過期間別の経年劣化が原因の重大製品事故」の発生状況です。重大事故には「死亡事故・重傷病事故(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)・後遺障害事故・一酸化炭素中毒事故・火災」などが含まれます。
このデータから他の設計上の標準制度の対象電化用品も含めて10年以上経過した頃から発生し、また増加しているのが分かります。
特に扇風機は顕著に表れています。でも実は扇風機は重大製品事故発生率は高くはありません。しかしながら長期使用されることが多いために、その残存台数が多くありこのように経年劣化による重大事故が一定程度発生しています。
サーキュレーターもまた然りです。
近年サーキュレーターは急成長している市場です。家電量販店に行っても今は扇風機以上に販売面積をとっているほどズラリと並んでいるお店を見ます。
その代表的なメーカーがアイリスオーヤマ。2010年よりサーキュレーター市場に本格参入し、現在全世界で累計販売台数が、1,500 万台突破しています。
また他のメーカーもここ数年で飛躍的に販売台数が伸びており、このことから今後10年20年と残存台数が増えることが予想されます。
こういった背景から扇風機と基本的な構造を持つサーキュレーターは、古くなった物の取扱いには注意が必要です。
経年劣化による発火やけが等の事故に至るおそれがあると認識すると同時に、古くなった物はより取扱いに注意を怠らないようにしましょう。
サーキュレーター付けっ放しで火事になる原因
■管理があまく耐久年数をも知らずに使用を続けている
■トラッキング火災によるもの
■清掃不良などによるヒューマンエラー
サーキュレーター付けっ放しで火事になる原因は主に上記の3点です。既にお伝えした内容もありますが、より深掘りして見ていきましょう。
管理があまく耐久年数をも知らずに使用を続けている
■設計上の標準使用期間が明記されているものはその期間後は注意が必要
■モーター・コンデンサ・首振り部の内部配線・電源コードなど部品の劣化に注意
冒頭からお話をしている設計上の標準使用期間、その超過による経年劣化が火事の原因の一つです。ここまでお読み頂いた方はすでにご理解して頂けていると思います。
そして更に大事なのが、自身での製品管理です。いくらメーカーが大丈夫だといっている標準使用期間であっても、自身による普段からの注意が必要、例としてはモーター・コンデンサ・首振り部の内部配線・電源コードなど部品の劣化です。多機能のサーキュレーターほど部品数は多くなり、その分消耗したり劣化の恐れは増えます。
例として家電が経年劣化で故障する最も多い原因は、コンデンサに封入されている電解液の液漏れや蒸発による特性劣化・破損が原因と言われています。
コンデンサとは簡単に言うと電気回路上において、“電気を蓄える部品”にあたります。サーキュレーターによってはその寿命を数年程度と考えて、あまりいいコンデンサが使われていないのもあるようです。
内部の様子は外見からは判断ができません。普段から気を付けてチェックをしましょう。
これは扇風機の内部配線の劣化が原因での火災です。サーキュレーターの首振り機能があるタイプにも言えることなので注意してください。
こういった症状がでたら要注意です。
トラッキング火災によるもの
■コンセントとプラグの間にホコリが発火の原因になる
トラッキング火災とは、長い間差し込んだままにしているとコンセントとプラグの間にホコリがたまります。そこに湿気が吸収されるとプラグの両刃の間で放電が繰り返されます。そして最後はショートし発火してしまう現象です。
令和3年版の消防白書を見ると、火災は冬場が多く6月や7月は1年の中で最も少なくなっています。しかしトラッキング火災においては、湿気の多い6月~8月が発生しやすい月となっています。
サーキュレーターがいくら優秀であっても、このトラッキング火災は免れません。それは他の家電製品においてもそうです。
洗濯機や冷蔵庫など長い期間プラグを差し込んだままで使っている家電製品も要注意です。サーキュレーターのみならずキッチンやトイレや洗面所付近など湿気が多い場所で起こる可能性があります。
こういったことでつけっぱなしサーキュレーターのトラッキング火災は防ぐことはできます。また製品を過信することなく、やはりセルフチェックは大事だと心に留めておきましょう。
清掃不良などによるヒューマンエラー
■清掃を怠るとゴミや埃や髪の毛など溜まり、思わぬ火災の原因にもなる
サーキュレーターをつけっぱなしにしているとついつい清掃を怠ってしまうことがありませんか?
気付けばモーターの稼働軸にもこんな風にゴミや埃や髪の毛が絡んでいます。これを放置していると故障どころか下手をすると火災の原因にもなり兼ねません。
これはファンヒーターの埃が溜まった事例ですが、途中2分16秒あたりで埃が黒く焦げ付いている場面があります。清掃の必要性を感じさせる内容となっています。
このように定期的な清掃は必要不可欠。ただ機種によっては羽根を外せるものと外せないものがありますので、むやみに分解する前に必ず取扱説明書で確認しましょう。
また配線コードの上に家具などの重いものを置くのも危険です。配線コードを普段見えないように工夫されている場合なども注意が必要です。もしかして何かで踏みつけていませんか?
これらはユーザーが引き金となる事故、ヒューマンエラーといいます。くれぐれも重大事故にならないように清掃不良や取扱いには気を付けてください。
参考までに、こちらのボルネードの公式動画では清掃方法を紹介してくれています。ここまで清掃すればもういうことなしです。とても参考になるので是非確認をしてみてください。動画でも使われていますが、エアーダスターがあればとても便利ですよ。
サーキュレーターをつけっぱなしにした時の電気代は?
消費電力 | 2W | 5W | 10W | 20W | 30W | 40W | 50W |
電気代(24時間) | 1.3円 | 3円 | 6円 | 13円 | 20円 | 26円 | 33円 |
電気代(30日) | 39円 | 97円 | 195円 | 389円 | 582円 | 777円 | 970円 |
これは1kWh単価27円で計算したものです。これをさらに消費電力を風量に置き換えてみます。
■微風(2W)約40円
■弱風(5W~10W)約100円~200円
■中風(20W)約400円
■強風(30W~40W)約600円~800円
■爆風(50W)約1000円
サーキュレーターを1ヶ月間(30日)つけっぱなしする場合「1W×20円」で計算すると、おおよその電気代が簡単に算出することができます。
微風や弱風程度なら例えつけっぱなしでも1ヶ月間で40円から200円、中風でも400円です。
機種にもよりますが40Wもあれば結構な風量です。
画像はアイリスオーヤマPCF-SC15T、18畳対応風の到達距離25mというコンパクトながら優れ性能を誇ります。消費電力は38Wですが十分な風量を送ることができます。実際に使うとそこまで電力を上げることも少なく、仮に20Wでつけっぱなしで使ったとしても1ヶ月400円程度の電気代となります。
ただこれはあくまでも例であって、メーカーはそこまでの使用はすすめていません。では「つけっぱなし可能なサーキュレーターはないの?」と気になる方、それは後で紹介しますね。
サーキュレーターをつけっぱなしで寝る時に注意したいこと
■直接風に当たり過ぎると体調不良の原因になる
サーキュレーターをつけっぱなしで寝ると体調を崩す可能性があります。風に直接当たり過ぎると皮膚の表面温度が下がり、冷え性や倦怠感などの原因にもなります。
また風は体温を奪うので血行不良になり足がつることにもなります。年齢を重ねるとなお要注意です。
また美容の観点からも長時間、直接風を当てるのは体によくありません。肌を乾燥させてしまうので免疫力が落ちて水分が逃げやすくなるなどトラブルのもとです。
サーキュレーターのつけっぱなしが可能なおすすめメーカー
サーキュレーターは扇風機の標準使用条件を参考に、メーカーはそれぞれ安全に使えますよという期間を設定しています。でもそれは反対に言えば過度の使用時の安全を保てないということ。
では24時間つけっぱなしでも大丈夫なメーカーはないのでしょうか?
実はあるんです!
はっきりと標準使用期間が記載されていない機種を探して、メーカーや販売代理店にメールで問合せをしたところ2つの販売代理店が「24時間使用可能」と答えてくれました。
それではその「つけっぱなしでも大丈夫」との回答のあったサーキュレーターを紹介します!
24時間連続使用可能なスイスの老舗家電メーカーBONECO(ボネコ)
”healthy air”をコンセプトに、1956年より60年以上にわたって世界中に空気清浄機や加湿器・サーキュレーターなどを製造販売しているスイスの老舗家電メーカーBONECO 。
もともとは加湿器を販売、それが大成功を収め次なる空気洗浄機を開発します。やがてその性能の高さが評価され世界中に愛されるブランドとなります。さらにその空気を部屋中に送り出すためにサーキュレーターをも開発、欧州を始め絶賛されているメーカーです。
日本ではホームベーカリーでも有名なシロカが販売代理店を務めています。
BONEKOのサーキュレーターは「F100]「F120]「F220]と現在3機種がラインナップされています。どれも24時間つけっぱなし大丈夫とのことです。
そして今注目されているのは2022年4月28日に一般販売が開始された「BONECO F220CC Clean & Cool Fan」です。これはサーキュレーターと空気清浄機が一体となった2in1タイプ。
今までにないタイプのサーキュレーター、空気中の0.3μmまでの粒子を除去する高性能のESPフィルターにより花粉やPM2.5を捕集し、UV-Cライトで内部に取り込んだ空気を除菌します。
連続使用テストを製品が動かなくなるまで行うVORNADO(ボルネード)
VORNADO(ボルネード)世界初のサーキュレーターとして1945年に誕生して以来、世界中で愛用されています。本来の役目である空気循環器としての性能は非常に高く、その生み出す竜巻状の風に最初圧倒されるでしょう。
販売はエヌエフ貿易社が日本の総代理店となり展開されています。現在は22種類のサーキュレーターがラインナップされています。(2022年7月時点情報・在庫のない機種もあり)
ボルネードはこれまで販売した商品をすべてこの棚に置き「連続稼働テスト」を行っています。世界各国で販売した全モデルを国ごとに分け、その国の電圧で稼働させています。日本なら100V、台湾なら110V、韓国なら220V、オーストラリアなら240Vのように。
ボルネード・エアー社のご紹介より引用
これはアメリカ合衆国・カンザス州ウィチタにある「倉庫・工場・オフィス兼ラボの大型一体施設」で行われている「連続稼働テスト」の様子です。
その全ての製品は動かなくなるまでテストがされています。その間一度も止められることもなく、そのほとんどは10年以上稼働するとのことです。
これはほんとびっくりです。まさかこんなテストをしているメーカーが存在するなんて驚きでした。
これはたまたまなんですが、写真にある2機種のレビュー記事を書いていますので、よければご覧くださいね。
ただこんなメーカーでも10年経てば買い替えを推奨しているようです。(エヌエフ貿易社で確認済)
サーキュレーターは持って10年と決定付けた理由でもあります。
まとめ
以上今回のまとめです。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
くれぐれもメンテなしでの長期使用はなさらないでくださいね。
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